CAPA運用

特性要因図(フィッシュボーン)の正しい使い方 — 4M+1Eの5本骨で漏らさない

公開日 2026-06-29 読了目安 約5分 カテゴリ CAPA運用

不適合が出るたびにフィッシュボーン図を書いてはいるけれど、骨に何を書けばいいか毎回迷う。会議室のホワイトボードに描いた図が、なんとなく「人」「機械」「方法」と並んでいるだけで、肝心の真因にたどり着けない——。中小製造業の品質会議でよく見かける光景です。

特性要因図は1950年代に石川馨博士が考案した、世界中の品質管理現場で使われている定番ツールです。しかし「使い方」を体系的に学ぶ機会は意外と少なく、見よう見まねで描いている現場が大半ではないでしょうか。本コラムでは、骨の立て方・原因の掘り方・NG例までを、現場ですぐ使える形でまとめます。

なぜ特性要因図が「飾り」になってしまうのか

ある食品工場で、異物混入のクレームが続いたときの話です。品質会議で毎回フィッシュボーン図を描くのですが、3か月経っても再発が止まりませんでした。図を見せてもらうと、骨に書かれていたのは「作業者の不注意」「機械の老朽化」「マニュアル不備」といった抽象的な言葉ばかり。これでは対策の打ちようがありません。

特性要因図が形骸化する原因は、主に次の3つです。

  1. 骨の分類が決まっていない — 「人」「物」「方法」など、その場の思いつきで骨を立てるため、漏れが出る
  2. 原因を1段で止める — 「不注意」「老朽化」で書いて満足し、なぜそうなったかを掘らない
  3. 書きっぱなしで検証しない — 図を描いて終わり、本当にその原因かを実データで確認しない

逆にいえば、この3点を仕組み化すれば、フィッシュボーンは強力な真因分析ツールに戻ります。

4M+1E — 製造業の標準5本骨

特性要因図の骨は、業種ごとに型があります。製造業で最も使われるのが 4M+1E です。

「4M」だけだと環境要因が落ちやすく、特に食品・医薬・電子部品では致命的な見落としになります。必ず +1E を含めた5本骨で描くのが、現場で漏れを防ぐ第一歩です。

業種で骨を足し引きする

5本骨は出発点であり、業種によって追加・変更が必要です。

骨を増やしすぎると逆に整理がつきません。最大7本まで を目安にしてください。

原因を3段階で掘る — 大骨・中骨・小骨

骨を立てたら、次は原因を掘ります。フィッシュボーンは「大骨 → 中骨 → 小骨」の3段構造で描くのが基本ルールです。

  1. 大骨 — 4M+1Eの分類そのもの(例:Man)
  2. 中骨 — その分類の中の具体的な要因(例:作業者のスキル不足)
  3. 小骨 — さらに踏み込んだ原因(例:新人配属後の教育時間が10時間しか確保できていない)

冒頭の食品工場の例でいうと、「作業者の不注意」で止まっていたものを、

ここまで掘ると、対策が「注意喚起」ではなく「朝礼時間を15分以内に固定」「ライン開始前の3分チェックリスト導入」といった具体策に変わります。

小骨を書くときの問い

掘り下げに迷ったら、次の問いを順に投げかけてください。

これは「なぜなぜ分析」と同じ発想ですが、フィッシュボーンの場合は 5本骨に沿って横並びで掘る ところが違います。1本の縦掘りでは見えない、横の関連が発見できます。

やりがちなNG例 5つ

現場で繰り返し見るNGパターンを挙げます。書き始める前にチェックしてください。

  1. 対策を骨に書く — 「教育徹底」「マニュアル改訂」は原因ではなく対策。原因の欄に対策を書くと、真因が消える
  2. 「不足」「不徹底」で止める — 「教育不足」「確認不徹底」は状態の説明であり原因ではない。なぜ不足したかまで掘る
  3. 複数の事象を1枚にまとめる — 「異物混入と寸法不良」を1枚で描くと骨が混線する。事象ごとに1枚
  4. データで検証しない — 描いた図の中で「これが真因」と決めた要因は、必ず実データ(記録・現物・再現実験)で裏付ける
  5. 当事者抜きで描く — 会議室の管理者だけで描くと、現場の実態とズレる。作業者を必ず1ID〜同席させる

特に1番と2番は、ISO9001や監査で「根本原因分析が浅い」と指摘される典型例です。指摘を受けてからではなく、描いている最中に自分でブレーキをかける習慣を付けてください。

描いた図を「使う」ところまでが分析

フィッシュボーン図は、描いて終わりでは意味がありません。次の3ステップで運用に組み込みます。

  1. 真因候補に印を付ける — 全ての小骨のうち、データで裏付けられた要因に赤丸を付ける(通常2〜4個)
  2. 対策と紐付ける — 赤丸ごとに「誰が・いつまでに・何をする」を是正処置記録票に転記
  3. 30日後・90日後に再評価 — 対策後の不適合発生件数を確認し、図に「対策済」「効果確認済」を追記して保管

この一連を回せば、フィッシュボーン図はCAPA(是正・予防処置)の核として機能します。図そのものが教育資料としても使えるので、新人の品質教育で「過去の不適合と原因」を学ぶ題材にもなります。

まとめ — 製造業の品質教育に組み込む

特性要因図は、正しく使えば真因にたどり着く強力なツールですが、自己流で覚えると「飾りの図」になりがちです。4M+1Eで骨を漏らさず、大骨→中骨→小骨の3段で掘り、対策と検証まで運用する——この型を組織で共有することが、再発防止の出発点になります。

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