CAPA運用

CAPAの有効性確認 — 30日/60日/90日の3点チェック

公開日 2026-06-29 読了目安 約5分 カテゴリ CAPA運用

「是正処置を打って終わり」になっていませんか

不適合が出るたびにCAPA(是正処置・予防処置)シートを書き、対策を決め、関係者に周知する。ここまではどの工場でも回っています。ところが半年後の内部監査で「同じ原因の不適合が別ラインで再発」「対策はやったがその後の効果は誰も見ていない」と指摘される——。これは中小製造業の品質会議で最もよく聞く悩みの一つです。

ある食品メーカーの現場で、過去2年間のCAPA記録を棚卸ししたところ、132件のうち有効性確認の記録が残っていたのはわずか18件(13.6%)でした。残りの114件は「対策実施報告」までで止まり、その後ライン長も品質保証も誰も追いかけていません。これではISO9001:2015の10.2.1 d)「とった処置の有効性のレビュー」を満たせず、外部監査で必ず指摘されます。

本稿では、是正処置を「打ちっぱなし」にしないための30日/60日/90日の3点チェックという運用法を紹介します。特別なシステムは要りません。Excel1枚と月例品質会議の30分があれば回せます。

なぜ有効性確認は飛ばされるのか

理由1:対策実施=完了と誤解されている

CAPAシートの最後の欄が「対策実施日」で終わっている書式が多く、そこに日付を書いた瞬間に「クローズ」扱いになります。本来そこからが有効性確認のスタートなのですが、書式が「実施で終わる」設計だと、追いかける文化は育ちません。

理由2:「いつ・誰が・何を見るか」が決まっていない

「効果を確認する」とだけ書かれた手順書では、確認の責任者も時期も曖昧です。結果として「忙しいから来月」が繰り返され、3か月たてば誰も覚えていません。

理由3:再発の定義が曖昧

「再発したらまたCAPAを起こす」という運用だと、別ラインや別ロットで起きた類似事象は「別件」として処理され、本来の根本原因が手付かずのまま残ります。

この3つを一気に解消するのが、時間軸を区切った3点チェックです。

30日/60日/90日チェックの全体像

3段階の役割を表にすると次のとおりです。

タイミング確認の目的主担当見るもの
30日後対策が現場に定着したか(実施確認)当該工程の班長標準書改訂版・教育記録・作業日報
60日後同一工程で再発していないか(再発有無)品質保証担当工程内不適合データ・顧客クレーム
90日後他工程・他ラインへ展開できたか(横展開)品質保証マネージャー水平展開マトリクス・他ラインのCAPA起票状況

ポイントは、確認者を3段階で変えることです。同じ人が3回見ると「前回OKだったから今回もOK」という確認バイアスが入ります。班長→品質保証→マネージャーと視点を変えることで、現場の定着・データの再発・組織全体への波及を別の目で見られます。

30日チェック:対策は「現場の動作」になったか

書類上の対策と現場の動作はしばしば乖離します。30日チェックでは次の3点を見ます。

  1. 改訂した標準書が現場に掲示されているか(古い版が残っていないか)
  2. 対象者全員に教育を実施した記録が残っているか
  3. 作業日報・チェックシートに新しい確認項目が反映されているか

たとえば「異物混入再発防止のため、ライン入口で粘着ローラー2回がけを標準化」とした場合、30日後に現場へ行き、粘着ローラーがあるか・日報に「ローラー実施○」欄があるか・作業者に「いつから2回がけになりましたか」と聞いて即答できるかを確認します。3つのうち1つでも欠ければ未定着と判定し、追加処置を打ちます。

60日チェック:データで再発有無を見る

人の記憶ではなく数字で見るのが60日チェックです。対策実施前60日と実施後60日で、同一工程の不適合件数を比較します。

実例として、ある金属加工工場でバリ取り不良の対策(治具改良)を打ったあと、60日チェックで「対策前の同期間14件→対策後3件」と確認できました。減少率78%なので有効と判定。一方、別の事例では「対策前8件→対策後9件」と微増しており、現場ヒアリングで「治具は変えたが作業者が以前の方法を続けていた」ことが判明、追加教育を実施しました。

数字で見るからこそ「効いたつもり」が排除できます。

90日チェック:類似工程への横展開

ここが最も飛ばされやすく、最も価値の高い段階です。1件のCAPAを他ラインや他工程に展開できれば、同じ轍を踏むコストを丸ごと避けられます。

水平展開マトリクスは縦軸に「今回の対策内容」、横軸に「他ライン・他工程・他工場」を並べ、それぞれに「展開要否」「展開期限」「展開責任者」を書き込む簡易表で十分です。Excel1枚で運用できます。

「今回はA工程だけの問題」と判定するときも、必ず判定理由を1行残すのがコツです。「B工程は治具形状が異なるため対象外」と書いておけば、次に類似事象が出たときの判断材料になります。

明日から始める3つの実務手順

手順1:CAPAシートに3つの確認欄を追加する

既存のCAPAシートに次の3行を追記するだけで運用が始まります。

書式が変われば現場の意識が変わります。「実施で終わり」の感覚を、書式から強制的に外します。

手順2:月例品質会議に「CAPA有効性レビュー」枠を15分入れる

毎月の品質会議で、その月に30日/60日/90日を迎えるCAPAをリスト化し、各案件3〜5分で確認結果を報告します。会議で公に確認する仕組みにすることで、担当者の「見落とし」を防げます。

手順3:未完了CAPAをダッシュボード化する

ExcelのフィルタやGoogleスプレッドシートで「30日チェック未実施」「60日チェック期限超過」を色分けするだけで十分です。可視化されると放置が一気に減ります。専用システムは不要、まずは手元のExcelで始めましょう。

教育と仕組みの両輪で根付かせる

3点チェックの仕組みを入れても、「なぜ有効性確認が必要なのか」を現場が理解していなければ形だけの作業になります。とくにCAPAは班長層・品質保証担当・マネージャーの3層が連動して動く必要があるため、階層別の教育が欠かせません。

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CAPAは「書いて終わり」ではなく「効いたかを確認して終わり」です。30日・60日・90日の3点を仕組みで押さえれば、同じ不適合が再発する組織から、再発を学びに変える組織へ変わっていきます。まずは来月のCAPAから、3つの確認欄を足すところから始めてみてください。

この記事を書いた人

Qulio合同会社 — 製造業の品質教育・eラーニングを提供する「品質カレッジ」運営。GMP/ISO/CAPAの実務経験者が監修。

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